おコメ博士の闇米日記

日本農業(特におコメ)について考えるブログです。

「土を乾かす」という魔法の話。

突然ですが、コレは何の写真でしょう?

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そう、わかる人にはわかるアイツ。稲です。プラスチックのコップに詰めた土に育っている稲の写真ですね。一応、おコメのブログだからね。

 

さてさて、左の稲に比べると、ずいぶんと右の稲の生育が良いみたい。

ですが実はコレ、同じ田んぼから採ってきた土に同じ品種の稲の苗を植えてみただけ。

種も仕掛けも(種は使ってるか・・・)ありません。

それなのに何でこんなに生育が違うの?

とお思いのそこのアナタ。実は、稲の苗を植える前にちょっとした魔法を土にかけたのです。(なんやら胡散臭くなってきましたな)

 

といっても肥料をパラパラ入れてみた、なんて野暮なことは勿論しておらず。

(それで生育が良くなるなんてのは当たり前のことですからね。)

 

実は実は、なんてことはない、稲を植える前に土を乾かした、というだけなのです。

同じ重さの水田の土を2つコップに入れて、1つは乾燥機で1晩乾燥して乾いた土にし、もう一方は湿った土のまま。

で、翌日どっちのコップにも水を入れて泥んこ状態にし、同様の稲の苗を植えた、ってだけなのです。

それでこんだけ稲の生育ちがうんですよ?すごくないですか?

オセロのキャラクター

でもコレって、残念ながら?僕が見つけた訳でもなんでもなくて、昔から知られている現象だったりします。コレを、乾土効果って、言うんです。

【乾土効果】

 土壌の有機態窒素の無機化を促進させる現象の一つ。土壌を風乾処理(常温大気中で乾燥)した後に、水分を与えて保温静置培養すると、風乾処理をしない土壌に比べて多量のアンモニアが生成する現象をいう。水田、なかでも湿田の土壌でこの現象は著しいが、水田以外の土壌でもある程度は認められる。このほかに地温の上昇(地温上昇効果)、アルカリ化(アルカリ効果)、機械的な粉砕、有機溶媒処理や加熱処理によっても窒素の無機化が促進される。

 (引用:農業技術辞典 ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA

 

なにやら堅苦しい言葉でゴチャゴチャと辞典には書いてありますが、乾燥することによって微生物が死に、次の湿潤状態の中で死んだ微生物菌体に含まれている窒素が別の微生物によって無機化されて、稲に吸収可能な無機態窒素がジャンジャン出てくる、って感じです。

ちょっと古い論文ですが、乾土効果についてのこんな論文があるので興味あるひとは是非↘

www.jstage.jst.go.jp

 

特に雪が多い東北の田んぼだと、四月になっても田んぼが湿っていて、田植えが近づいても田んぼがグチョグチョ、なんてことが結構あったりします。

で、天候が良くて土がすごく乾いた年だったり、意識的に溝を掘って排水し乾かした場合だったり、田植えを遅くして田んぼが十分に乾くまで待ったりすると、稲の生育が劇的に良くなる(湿ったままの状態と比べて)って現象は、結構昔から知られてました。

なので化学肥料が普及する前の時代は、元々の土の生産力が超重要だった訳で、乾かすことに気を使ってたようです。

乾燥剤のイラスト

ですが、その後化学肥料が普及するようになると、土の生産力を前ほど重視する必要がなくなったので、乾かすってことは優先順位は下がっていきました。乾かさなくても窒素を肥料として投入できますからね。

で、田植えも昔は5月末とか6月上旬だったのが、乾かす必要がなくなったので兼業農家の都合がいいGWになったりね。なので昔の栽培歴(田植えが遅い)をみたりすると、理にかなってるなぁと思ったり、します。

田植機のイラスト

最近になって、「減肥が重要だ」「生産コスト減だ」「環境低負荷だ」ってキーワードが色々でてきたので、乾土効果も少し注目されはじめていたりします。

なので、ちょっと興味ある人は、まず土をとってきてコップの実験をしてみるのがお勧めです。作物の生育が全然ちがうので、きっとビックリするはずですよ。