おコメ博士の闇米日記

日本農業(特におコメ)について考えるブログです。

自然栽培の現状を解説Part2「自然栽培稲作の雑草はカヤツリグサ系に気をつけろ」

一般社会で「雑草魂」は根性あふれるスピリットとして良いイメージで紹介されたりする昨今ですが、ズバリ農家からしたら「雑草魂は勘弁してくれよ」的なスピリットです。

なんてったって、箱入り娘のような繊細な作物に比べて、雑草はほっとけばグングン伸びて作物の邪魔をする荒くれ者。

稲の場合だと、完全にほっといて雑草を繁茂させたら、収量が80%減少したって報告もあるくらい。*1

もし収入が80%減ったらみんな路頭に迷いますよね。それくらい雑草は重要問題なのです。

 

そんな憎き雑草を退治する方法として発明されたのが除草剤。

枯葉剤(2,4D)やラウンドアップ(グリホサートイソプロピルアミン塩)が有名なものですが、大雑把に言えば化学物質で雑草の細胞分裂を異常にさせて枯らせちまおうぜ、的なやり方です。

賛否両論あるものの、これで農家の重労働がめちゃめちゃ軽減され、作物の生産性が高まったことは間違いない事実です。

 

ところが、「天が動いているんだ」って説が普通だったら、「いやいや地球がまわってるんだぜ」っていう人が出てくるのが多様な人間社会というもの。

雑草を憎き存在と捉えるのじゃなくて、雑草も生き物なんだから共存していこうぜ、ていう考え方も一方で出てくる訳です(雑草が農業の持続性に貢献しているとか、除草剤の利用が環境への悪影響が大きい、とか色んな理屈の結果)。

私が推す自然栽培も除草剤を使わないので、その考え方をくむ一つの方法です。

 

やや前置きが長くなりましたが、除草剤を使わないのはいいけれど肝心の「作物生産がまともに出来るの?」というのが重要な点。

確かに環境へ配慮し過ぎた結果、食糧が生産できなくてみんな野垂れ死にってのは笑えないフィナーレです。

だから、除草剤を使わないながらも雑草害を減らすっていう技術がキーポイントになってきます。

「そんな神技あるの?」って疑いたくもなりますが、まずは焦らずに、肥料や農薬を使わない場合って雑草はどうなってるのか、の現状把握をするのがファーストステップです。

ということで、今回は自然栽培の水田ではどんな雑草が出ていて、収量に対してはどんな影響があるのかなっていう研究をやったので、この内容を紹介します。

 

ここに英文で有料ですけど論文が載っています↘

http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01448765.2017.1299641?journalCode=tbah20

 

≪田んぼにいる色んな雑草≫

雑草は、田んぼの外から種が飛んできて発芽する、と考えられることが多いですが、実はそもそも土の中にめちゃくちゃな量と種類の雑草種子が眠っていて、温度やら日光やら養分やら、色んな条件が揃ってきたタイミングで「発芽するなら?今でしょ!」と雑草が一人林先生をやって続々と出てきます。

そもそも適した条件で出てくるのでロケットスタート

更には、この農業の長い歴史で排除され続けても生き残ってきたタフガイな雑草のことですから、その後もグングン伸びていきます。

で、ほっとくとこうなっちゃう。

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こうなっちゃうと、稲の光やら養分を奪い取っちゃって、かなりの収量減を引き起こしちゃいます。

で、まずは一般的に自然栽培水田ではどんな雑草群集ができやすいの?ってのを、16の水田に発生している雑草を同じ単位面積当たりから採集して、重さ(乾燥させた後の重さ)をベースに分析してみました。

で、結論からいうと自然栽培水田で発生しやすい雑草群集は、コナギ系グループとカヤツリグサ科系グループの2パターンに大別できるってことが分かりました。

コナギっていうのはさっきの写真に写っている広葉のコレで、

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カヤツリグサ科で有名なクログワイは畳のイグサみたいなコレです。

解析のプロセスはちょっとややこしいので詳細は論文を読んでほしいのですが、雑草グループにも2パターンあるよってのをざっくりと説明しているのが下の図です。

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点線の大きな丸と、線の丸が二つありますよね?

点線の丸が稲を育てないで土だけ培養したら出てきた雑草→潜在的な雑草

線の丸が実際の水田で出てきていた雑草→実際の雑草

です。

この図が示してるのは、1)潜在的な雑草と実際に発生してる雑草はかなり違うこと、2)実際の水田雑草もコナギメインの場合とカヤツリグサメインの場合の2パターンあるってことです。

※解析の手法が知りたい人は「主成分分析」ってやつを検索してみると良いです。

 

≪雑草種別の収量害の違い≫ 

で、どんな雑草でも生えてたら悪影響はおんなじなの?っていう疑問があったので、種別に収量への影響を分析してみました。

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○がコナギっていう雑草種で、●がカヤツリグサ科の雑草種。

全体の雑草やコナギの重さは、増えても収量をさして減らしていませんが、カヤツリグサ科の重さが増えてくると、収量がへっています

つまり、コナギは収量にさして問題なさそうだが、カヤツリグサ科は収量を減らすインパクト大きいよってのが言えるのですね。

だから、収量をある程度維持しようと思ったら、カヤツリグサ科の雑草が繁茂しないように目を光らせようってのが重要だと考えてます。手法は色々とあるんですが、そこは細かく比較したことはないのでまた今度。

あと、気を付けてもらいたいのは、これはあくまでも16の自然栽培の調査に限ったことなので、他の水田だと違う雑草種が出ていたよ、とか、うちではコナギの雑草害がひどいよってケースもあるようです。農家さんからそういった感想を頂いているので、データの鵜呑みも禁物です。なので、一つの指標として捉えて頂けると嬉しい限りです。

 

と、そんなこんなで、今回は自然栽培稲作の雑草と収量の関係について解説してみました。前回は解説が長くなってしまったので、今回は短く頑張ってみました。