おコメ博士の闇米日記

日本農業(特におコメ)について考えるブログです。

農業のスマート化。来年から加速する?

麦わら帽子をかぶっている田舎のおじさんでも「AI」なんて言葉を口にするのも最早普通になる程に、最近はどこのテレビ番組でもAIやら人工知能やら、パワーワードがもてはやされています。2045年頃に人工知能が人間の知性を超える!シンギュラリティとかね・・・

農家ã®ç·æ§ã®ã¤ã©ã¹ãï¼ç¬é¡ï¼

実際中国では、AI判断で信号を制御して交通渋滞を大幅に緩和させたり、町中の監視カメラの画像認識で指名手配中の犯罪者を見つけたりと、AI導入のその効果も大きいとか。

中国・貴陽市において、ビッグデータを活用した「渋滞予測・信号制御シミュレーション」の実証実験で渋滞緩和効果を確認 | NTTデータ

という訳で、世界はAI革命に振り回されそうな感じなのですが、他の産業界からの例に漏れず、農業界もスマート化(このスマート化の定義はかなり曖昧だけど)を推し進めてもっと効率的にやっていこうね、的な流れがやってきています。

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農学の世界では、日本の中心的存在である研究機関の農研機構の理事長が、先端技術に詳しい元三菱電機副社長が就任したり(これまでは農業に詳しい人がなってきた)と、これまでの人事からはかなりかけ離れた変化が生まれていたりします。

なんか異分野の人がいきなり抜擢されて組織のトップになるっての、アウトレイジでも見た気がしますよ(ヤクザのトップに元証券会社の人がきて幹部達がワチャワチャする展開)。

アウトレイジ 最終章 [DVD]

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 農研機構の内部の人に言わせると、いきなりAI活用とかICTとかスマート化とか言われても、って感じで戸惑いが大きいようですが・・・

アウトレイジのように消されないことを祈ります(/・ω・)/

www.nikkei.com

とは言え、テクノロジーの進化とその導入は遅かれ早かれ産業に浸透してゆくものに違いないので、今は農業界でもスマート化過渡期なんだろうと思われますが、その浸透のスピードが一気に加速するんじゃないかと思わせるプロジェクトが来年度から始まります。

その名も、「スマート農業加速化実証プロジェクト」です。

スマート農業加速化実証プロジェクトについて:農林水産技術会議

このプロジェクトが支援する取組↘

農業の成⻑産業化を実現するためには、近年、技術発展の著しいロボット・AI・IoT等の先端技術を活⽤した「スマート農業」の社会実装を図ることが急務です。このため、先端技術を⽣産から出荷まで体系的に組み⽴て、⼀貫した形で実証研究を⾏い、データの分析・解析を通じ、最適な技術体系を確⽴する取組を⽀援します。

公募が開始される前の今の状況では、全国で50地区が「スマート実証農場」として選定され、様々な問題をスマート化で解決しようとする実証試験が行われます。1地区最大1億円の経費が計上される予定で、スマート化の効果を農研機構がデータをとる予定。

ポイントとなるのは、自動運転トラクターを導入したらどれだけ省力化でき、どれだけの収益UPにつながるか、というようなスポット的な試験ではなくて、生産から出荷まで体系的に組み立てた「スマート実証農場」というのがポイントのようで。

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つまり一つ一つ丁寧にスマート化するんじゃまどろっこしいので、全体的にガツンとスマート化しようぜ的なイメージです。

具体的には、スマホを使った経営管理自動走行トラクター自動運転田植え機自動水管理システムドローンを使った栽培管理収量コンバインによる適切な栽培管理、といったようにです。

ただ、どの機械がスマート機器に該当するのか、ってのはかなり曖昧なようで、別にインターネット通信機能がついてるとか、無人動作機能がついてるとか、そういう条件がある訳ではありません。要はその技術を導入したら、省力化できる!精密化できる!高品質化できる!ってのがポイント。

また、それによって実証された成功事例が他の地区でも再現できそうか、ってのもポイントのようですね。

今年度中にスマート実証農場が選ばれますが、一体どんな場所が選ばれるのでしょうか。


ロボ田植え機 高い精度を実証 農研機構

どうすべき?獲れない田んぼの地力底上げ。【緑肥編】

農学部の学生時代、中古のオンボロワゴンアールを走らせ東北地方の様々な無肥料無農薬水田を調査していました。

(その時の論文はこちら↘ 当時は緑肥関連の調査はまったくしていませんでしたが・・・)

iwate-u.repo.nii.ac.jp

 

さて、どの水田も、肥料や農薬を使わず、稲の苗を植え、除草をし。。。という大まかにいえば同じ栽培方法をしている水田なので、一見似たような結果が出そうなものですが、実際はそれぞれの水田が見せる顔は様々です。

そして、生産者にとっては無視できない収量という点でも、2俵/反しか獲れない田んぼもあれば、8俵/反もとれる田んぼもあるくらい、水田により稲の生育反応も大きく違う訳です。

(地域によって収量差が大きいけど、その理由はなに?について書いた論文はコチラ↘)

www.jstage.jst.go.jp

 

言ってしまえば、稲の生育が悪いのもその田んぼの個性がもたらす結果と言えばそうなのですが、趣味の稲作ならまだしも、”農業”としての稲作なら「稲の生育は悪いけど、君は世界に一つだけの田んぼだ!」と言っている余裕はなかなかありません。

世界に一つだけの花

世界に一つだけの花

 

特に一般的な栽培(化学肥料を施肥して、除草剤や農薬を利用する方法)を繰り返してきた田んぼで、いきなり無肥料無農薬栽培をやったりすると、稲の生育がすこぶる悪い、というケースも少なくありません。

さて、そこで今回の記事では、稲の生育がすこぶる悪くて収穫量が見込めない水田をどのように改良すべきか?について、緑肥の利用という観点から考えてみようと思います。

ウチは一般的な栽培だからな~とお思いの皆さん!

緑肥には土壌の物理性・化学性・生物性を改善する働きがありますから、無肥料無農薬栽培や有機農業に限らず、様々な栽培方法に有効だと思われますよ。

 

緑肥とは

そもそも、緑肥とは何でしょうか?

緑肥とは、栽培している植物を、収穫せずそのまま田畑にすき込み、後から栽培する作物の肥料とすること、またはそのための植物のことです。

 *1

と書かれているように、収穫目的ではなく土壌改良を目的に植えられる植物のことを指します。

例えば、水田では稲を収穫した9月から10月にかけて寂しくなった田んぼに緑肥の種を播き、翌年の春まで植物を生育させます。そして、冬を越え、田植えの1カ月前頃を目安に植物体をすべて土壌にすきこみ、土壌の性質を改善しよう、とするのが一般的です。

その昔、集落内で稲の生育が悪い水田では、山から運んだ有機物(落葉とか枯れ枝とか)を田んぼに入れたり、レンゲを播いたりしたそうですが、このレンゲが緑肥に当たります。

春先、↘のような綺麗な花を咲かせるので、じいちゃんばあちゃんにとっては「レンゲの花はキレイじゃったのう」と、良き思い出のよう。

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田んぼもイロイロ。緑肥もイロイロ。

さて、緑肥には大きく分けて二つの種類があります。

1つはレンゲ等のマメ科緑肥、もう1つはイタリアンライグラス等のイネ科緑肥です。

 

マメ科緑肥≫

まず、マメ科緑肥の最大の特徴は、根にできる根粒を居場所として増える根粒菌が、大気中に膨大にある窒素を固定することで土壌の窒素肥沃度を高めることにあります。

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落花生の根粒。ここで根粒菌が大気中の窒素を固定する。


その昔、マメ科緑肥としてはレンゲが有名でしたが、昨今ではヘアリーベッチというマメ科緑肥の研究報告も増えており(レンゲより窒素固定量が多く、稲の収量増の報告がある)、人気が高まってきています。

また、雑草としてよく見るシロクローバ等のクローバ等もコスパ的には良いようです。

マメ科緑肥として一押しされることが多いヘアリーベッチは、窒素固定の効果に限らず、

(1)土壌にすきこんだ後の分解速度に関係する植物体のCN比(炭素と窒素の割合)が10~11と低く、分解速度が速いことや、

(2)窒素に限らず菌根菌が着生することでリン酸吸収能が高まること、

(3)根が深く、土壌の排水性を改善する、

等の効果が期待できます。

 

≪イネ科緑肥≫

イネ科緑肥とは、その名の通りイネ科の緑肥のことですが、こちらはマメ科緑肥で期待できる窒素固定は基本的に期待できません。

しかし、例えばイネ科緑肥の一つであるイタリアンライグラスは、ただばら撒くだけで発芽するのでお手軽度が高く、すきこまれる有機物量も多いので、腐植を多くする効果が期待できます。

有機物である腐植が増えることは、微生物のエサが増えることを意味するので、土壌微生物の活動が活発になることが期待できるのです。

 

結局どの緑肥が1番いいの?

名探偵コナンはいつも「真実はいつも一つ!」と叫びますが、考慮すべきポイントが多く、状況依存性が高いと言われる農業では、絶対的正解はなかなかありません。

重要なことは、それぞれの水田に適した緑肥を選ぶことです。

一般的には、有機物が不足している土壌にはイネ科緑肥を、排水性が悪かったり窒素が極端に少ない場合はマメ科緑肥を、と判断することが多いですが、それもあくまでも一般的な事例に過ぎません。

個人的には、ヘアリーベッチやシロクローバ、レンゲ、イタリアンライグラス当たりを条件の近い水田で試してみて、成績をみつつ絞っていった方が合理的かなと考えています。

(田植え直前にすきこむと有機酸が発生して稲の生育が阻害される、なんてこともあるので、どのタイミングで、どのようにすきこむかも、重要なポイントだと思っています)

 

緑肥のコスト

緑肥の種子はホクレン雪印種苗タキイ種苗などの種苗会社が多くの種類を扱っています。楽天市場Amazon等のネット通販でも買えますが、農協が畜産農家向けに多くの種子を扱っているので、少なくとも私のエリアでは農協で買う場合が安く済むようです。

参考までに、農協で買った場合の代表的な緑肥の種子価格、推奨播種量、反当たりコストを紹介します。

 

【種子価格】

①レンゲ 1530円/kg

②シロクローバ 2360円/kg

ヘアリーベッチ 1200円/kg

④ライムギ 620~655円/kg

⑤イタリアンライグラス 800~1220円/kg

 

【推奨播種量】

①レンゲ 3~4kg/反

②シロクローバ 1kg/反

ヘアリーベッチ 3~5kg/反

④ライムギ 8~10kg/反

⑤イタリアンライグラス 4~5kg/反

 

【反当たりコスト】

①レンゲ 4590円/反

②シロクローバ 2350円/反

ヘアリーベッチ 6000円/反

④ライムギ 6550円/反

⑤イタリアンライグラス 6100円/反

まとめ

 一口に緑肥といっても、期待できる効果はそれぞれ違います。また、それぞれの農地によって、その緑肥の効果も同じではありません。

理想的なのは様々な緑肥を試しつつ、その農地に適した緑肥の播種量やすきこみの方法(そのまますきこんでも大丈夫か、刈って枯らしてからすきこんだ方が問題ないか等)を検討することではないでしょうか。

 

ちなみに、緑肥の基本的な知識を得るには、 Q&A方式で書かれているこちらの本がお勧めですよ。

緑肥作物 とことん活用読本

緑肥作物 とことん活用読本